Campaign Asiaが6月17日に発表したシンガポールの消費者体験トップ50ブランドによると、上位50ブランドに入った日本ブランドは「ユニクロ」「トヨタ」「Ichiban Sushi※」「ホンダ」「レクサス」「モスバーガー」の6つである(ちなみに韓国ブランドは「Samsung」、中国ブランドは「Hai di lao」「Klook」「G2000」等がランクインしている)。日本ブランドは依然健闘しているように感じるが、どこに行っても日本ブランドが強いプレゼンスを持っていた1990年代と比べると、大きな変化を感じることも事実である。
※Ichiban Sushi:日本人起業家と現地人が立ち上げたRE&S社(シンガポール証券取引所に上場するレストランチェーン)の一ブランド。
30年前、ハイエンドなショッピングセンターといえば、高島屋、伊勢丹、そごう、大丸といった日系デパートが主流だった。しかし、現在ではそごうと大丸は撤退し、残る高島屋と伊勢丹もローカル勢に押されている。家電についても同様で、かつては家電量販店では日本メーカーの製品が大半を占め、安価な選択肢として韓国のサムスンやLG(当時はGoldStar)が存在していた。当時、中国メーカーはほぼ見かけなかった。しかし今では、ハイエンド市場はサムスンやLGが席巻し、コスパ重視セグメントにはMIDEAやHaierといった中国ブランドが人気を集めている。日本メーカーのプレゼンスはあるものの、ポジショニングが難しいところである。
日本企業の攻めが弱まった面もあるかもしれないが、韓国・中国メーカーの質の向上やマーケティング努力が大きいだろう。海外での戦いは、国内企業との競争が主である国内市場と異なり、海外企業と戦い、日本の消費者・顧客とは異なる思考を持った相手に売り込む必要がある。国内では、海外進出を積極的に後押しする声があるが、日本のものはよくて海外でも売れるという点は幻想であり、他にはない良さがあるもの、コストパフォーマンスの高いもの以外は厳しい競争を強いられる。海外市場での戦いに勝つことは簡単ではなく、安易な海外進出は失敗に繋がり傷跡を残すケースもある。
ただし、海外市場が大きいことは間違いなく、また東南アジア新興国の成長は目を見張るものがある。大きな果実を得るため、挑戦しがいのある市場であることも事実である。「日本ブランド」に神通力はないが、各企業が培ってきた技術・ノウハウを有効に活用できれば、新しい道が開かれる可能性はある。
同様のブランド調査がASEAN各国で行われている。国によって日本ブランドのプレゼンスが異なる等、面白い点もあり、機会をみて紹介したい。
参照先:Campaign “Singapore’s top 50 brands for consumer experience” (2024/6/17)